【映画】超豪華キャストによる再現VTRかっつーの!「ブラック・スキャンダル」

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

本記事は映倫区分R-15+作品に関する内容になります。


どうも、シカコです。
今回は1月30日公開の『ブラック・スキャンダル(原題:BLACK MASS)』について!
1970年代アメリカ・サウスボストンで実際に起きた汚職事件を描いたクライム映画です。

ブラック・スキャンダル



少し話が逸れますが、私はアル・パチーノとジョニー・デップが共演した映画『フェイク(原題:Donnie Brasco)』が大好きでして、この映画でジョニー・デップはFBIの潜入捜査官を演じていました。
そんな彼が時を経て本作ではFBIと手を組む「ギャングのボス」を演じると知り、興味津々で映画館に足を運びました。

前半はネタバレなしを意識して書きましたので「興味はあるけどネタバレ・・・」という方の参考になれば幸いです。

あらすじ


アメリカ・サウスボストンに生まれ、その街を愛した3人の男たち。
幼馴染みの彼らはやがてFBI捜査官、政治家、そしてギャングのボスとなった。
それぞれの道で生きながらも3人の友情や絆は固く結ばれたまま、自分たちが生まれ育ったサウスボストンを愛する気持ちもそのままだった。

ある日愛する街を脅かすイタリア系マフィアの一掃を目的に、FBIとギャングが手を組むことになる。
禁じ手とされる計画は成功を果たすも、それは新たな闇を生み落としただけにすぎなかった。

正義の名の下に、さまざまな欲望と権力が暴走していく。


映画の個人的評価(65点)


・俳優陣の演技の迫力◎
・パンフレットの内容充実度◎
・実話を忠実に再現しているためエンタメ度は低い
・事件や時代背景についてある程度の知識が必要かも?

率直な感想は・・・なんか思ってたのと違う?!


善し悪しはさておき「鑑賞前に抱いていたイメージや期待と違った」ということはよく起きる・・・というか、私にとっては映画鑑賞後の恒例文句です。
なので想像を膨らませたり、期待はしないように心がけているのですが・・・今回は首を傾げずにはいられなかった

「対立する勢力が手を組む」という刺激的な題材、しかもFBIとギャングに政治家という三勢力。
一体どんな悪事を企てていたの? それをどうやって世間から隠しつつ甘い蜜を吸っていたの? といった「バレる? バレない? 嗚呼、こんなことがバレちゃったらどうなるの〜!?」みたいなスリルをね、期待していたんです。

でも実際に観てみれば俳優陣の演技から漂うスリルはあれど、ストーリーから得られるスリルやサスペンスは薄味
鮮やかなアクションやクスッと笑ってしまうようなエンタメ要素は皆無。
はっきり言って、とある事件の再現VTRを観ているかのような淡々とした映画です。

アメリカではかなり有名な犯罪王であるジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(通称・ジミー)ですが、恥ずかしながら私はこの作品で彼の存在を知りました。
ウサマ・ビン・ラディンに次ぐFBI最重要指名手配犯として懸賞金を掛けられるほどのギャングスター。
彼自身やこの汚職事件があまりにも有名であるがゆえに、「ジミーを知っていることを大前提につくられた映画」というのを強く感じました。
実話を基にしていますから当然といえば当然なんですが、馴染みのない人間にしてみればちょっと不親切ともとれる内容と展開。

ジミーや事件についての知識があるのとないのとでは評価がわれそうです。
ストーリーとしてはピンとくるものがありませんでしたが、ジョニー・デップをはじめとした俳優陣の演技はお見事の一言
演技を観る価値はぶっちゃけアリ。ジョニー・デップめっちゃ恐いです。

あと30秒に1回以上は必ず「f**k」と罵詈雑言の嵐。
罵倒に対するヒアリングが上達した気がします。
女性までもが「m*ther f**ker」と侮蔑を吐きます。キレッキレだなあ!







シカコ



以下、ネタバレを含みます。





これはヒューマンドラマだ!


この映画はFBI史上最悪のスキャンダルについてではなく、スキャンダルを引き起こした男達の物語
要なのはスキャンダルではなくFBI、ギャング、そして政治家である3人の男達! むしろ3人のおじさん!!

3人が同郷で育った幼馴染みだったからこそ生じたスキャンダルなのであって、この3人のおじさんの関係性が一番の肝なんです。
実際当初はFBIとの協定に難色を示していたジミーにコノリーは「(協定を結ぶのは)ギャングとFBIではない。あんたと俺だ」と語っていることからも、彼らの関係性が重要であることが分かります。

上でも述べましたがスキャンダルが露見していくスリル感を味わう映画ではない。
「アイルランド人としての誇り」「絆」「忠義心」といった美しい言葉の裏にある、「支配欲」「出世欲」といった歯止めの利かなくなった欲望の暴走を描いたヒューマンドラマです。

でも正直政治家のビリー・バルジャー出番少ないよ! これじゃあボスとFBIと、時々政治家。
せっかくのベネディクト・カンバーバッチなのにもったいない。
人望ある優しいみんなの議長さんを見事に演じていただけに、出番が少なくて本当もったいない!
彼目当てで観に行った方には物足りないでしょうね。

あらすじや予告映像ではこの3人がさも顔を突き合わせて悪巧みし、甘い蜜を堪能しているように見えますが、実際に物事を動かすのはFBI捜査官であるジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)と、ギャングのボスであるジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(ジョニー・デップ)の2人
ビリーは非協力的な姿勢を取りつつも、この悪事を黙認しているという立場。
彼の場合ジミーには実の兄弟として、コノリーには幼馴染みとしての絆を重んじて接していたように感じたので「悪党とはちょっと違うんじゃあな〜い?」と思ってしまいました。
中心人物となって悪事を働いていたという明確な描写がなかったのが、違和感のひとつもかもしれない。

息苦しさをおぼえる生々しい演技


今まで数々の悪党を演じてきたジョニー・デップですが、本作のジミーはもうトップクラスの悪党でしょう。
「あんなことはもうしないよ」「ああ、約束だ」と握手を交わした直後に相手を殺しますからね。まじかよ〜!

街で知人の老婦人を見掛ければ声を掛けたり住人達から頼りにされ、息子にも愛情を注ぐ父親の顔。
かと思えば裏切り者や敵には容赦なく息の根を止める残忍なギャングとしての顔。
この二面性がアンバランスでもあり、ジミーの悪党としての異常性が際立っている要素でもありました。

ジミーの怖さで印象的だったのが、コノリー宅でのディナーシーン。
コノリーの同僚モリスが「家族以外には秘密のレシピ」の内容を家族以外であるジミーに話したことで、ジミーの態度は豹変。
「家族以外には秘密だと言ったのに、俺にその秘密を喋ったな?」と声を落としたジミーを目の当たりにして、モリスも思わず絶望の表情。
和気あいあいとしたディナーが拷問に変わった瞬間です。異に穴があきそう。
たとえ料理のレシピだとしても「秘密」を曝露する人間には容赦しないという牽制なんですが、当のモリスは死にそうでした。哀れなり。

もちろんジョニー・デップ以外の俳優陣の演技も魅力的です!
とくに女性陣の恐怖の演技には目を見張るものがあります。
頬の痙攣じみた震えや涙をこらえる表情、目の前の恐怖から逃げることもできずにただ耐え忍ぶ姿はあまりにも悲痛なものでした。

黒ミサの恐怖と欲望


原題の『BLACK MASS』の意味が黒ミサであると知ったとき、ある種の恐怖を覚えました。
宗教のように閉鎖的な情報環境にあり、強い信頼と絶対的権力が動く陰鬱とした雰囲気。
ジミーという悪魔がFBIの免罪符を得たことで暴走した正義。
毒々しい欲望が容赦なく蝕んでいく様は、パンデミックよりも恐ろしいです。

終盤でコノリーは殺人幇助などの罪で実刑判決を受けますが、司法取引を持ち掛けられても一切ジミーの犯罪行為について立証しなかったという旨の文章を読んだとき、なんとも感慨深い気持ちになりました。
FBI捜査官の彼がギャングのジミーとの繋がりに固執し、どんどんと落ちぶれていく様は見ていて不愉快でしたが、そんな彼でも「幼馴染みとの義理」は通すのだと。

対してジミーの腹心であった部下達は、映画冒頭からジミーや行ってきた犯罪行為について意欲的に話しています。
彼らは司法取引や証人保護プログラムを頼り、自分の保身を第一に行動しました。

だからといって「コノリーは良い人間だ!」とも、「腹心達は酷い奴らだ!」とも思いません。
むしろこういった形容し難い複雑なところが、この映画の醍醐味なんだと思います。

まとめ


かなり淡々とストーリーが進んでいくので感情移入は難しいですし、たいした衝撃もありません。
81歳のジミーとなったジョニー・デップの姿は、ある意味かなり衝撃的でしたが。

ヒューマンドラマとは言いましたが、登場人物達の感情の吐露があまりないので、どこか第三者目線で動くストーリーを追っている感が否めないのも事実です。
映画作品としての娯楽要素があればまた違った印象を受けたのでしょうが、良くも悪くも「実話」ですね。
もう少しアクションとかエンタメ要素を盛り込んでほしかったなあ、という欲望です。

そして公開前に得られる情報から期待した内容と作品の本質にズレがあり、それがまた違和感の原因になっているんだと思いました。
というか監督自身が「犯罪者のストーリーではなく、犯罪者でもあった人間のストーリーを伝えたかった」と語っているのに、なぜ「いかにこのスキャンダルが起きたのか」と犯罪のみに焦点を当て、強く主張するような宣伝にしたのか!

ん〜邦題もちょっとなぁ〜モヤモヤっと。私は原題のほうが好きですね、黒ミサ。
けして厨二心が刺激されるからというわけではなく。

パンフレットの情報量がかなり充実していたので、その点では満足度高いです。
写真付き相関図や解説が載っているので、鑑賞後混乱してしまったら整理するのに良いでしょう。
それと劇伴! 重々しい弦楽器の音色がぴったりで痺れました。チェロかな? 素敵でした。

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