【映画】とりあえず服を着てくれ。理想郷の崩壊、そしてトムヒの裸体が美しく描写された『ハイ・ライズ』

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

本記事は映倫区分R-15+作品に関する内容になります。


トム・ヒドルストン主演ということで見事につられて鑑賞してきました。
公開劇場が東京では渋谷のみという現実に驚愕。おかげで見逃すところだったぞ!

HIGH-RISE

ポスターめっちゃお洒落じゃないですか? すごく好きです。
ショップで売っていたしパンフと一緒に買えばよかったって少し後悔。

あらすじ


理想のライフスタイルを求めて、ロンドン郊外の高層マンション《ハイ・ライズ》に引っ越してきた医師のラングは、毎晩のように隣人たちが開く派手なパーティに招かれて新生活を謳歌していた。スーパーマーケット、スパ、ジム、小学校など、あらゆる設備が整ったこのマンションはまさに理想郷に見えた。
しかし、ラングは低層階に住むワイルダーから、フロア間に社会的地位に基づいた階級が存在し、互いに牽制しあっている事実を知らされる。

そして、ある晩に起こった停電を境に住民達の不満はついに爆発し、マンション全体を巻き込んだ暴動へと発展していく——。
公式サイトSTORYより)


ハイ・ライズ(2015年 イギリス)


監督ベン・ウィートリー
出演者トム・ヒドルストン(ロバート・ラング)
ジェレミー・アイアンズ(アンソニー・ロイヤル)
ルーク・エヴァンス(リチャード・ワイルダー)
シエナ・ミラー(シャーロット・メルヴィル)
ジャンルファンタジー映画 / SF映画








シカコ



以下ネタバレを含む感想です。





良くも悪くも精神が汚染されるどぎつい映画。


これサイコスリラーなんじゃないの? って思ってしまうくらいに皆が皆、狂ってる。そんな作品。
公開から一週間は経っているのに(公開劇場が少ないこともあるとは言え)、あまり話を聞かないなぁと思ってたんですけど、観終わって納得。

な・・・なにも言えねえ・・・。

強いて一言述べるとしたら、やっぱりトムヒは良い身体してる

泥まみれの髭面ラングが犬の肉をグリルする時点でお察しですが、全体的に(セクシャルでもグロテスクな意味でも)ショッキングな描写が多め
瞬間的な衝撃というよりは時間をかけてジワジワと蝕むようなシーンが多いので、結構しんどいかも。
まさか序盤にあった遺体の皮膚をめくるシーンが、後半で何度もカット挿入されるとは思わなんだ!
犬が頻繁に可哀想な目に遭うので、愛犬家の方は要注意です。

セックスシーンあるんだろうなぁとは思ってたけど、まさか中盤以降は服をきちんと着ている人間のほうが少ない状態で笑いました。
パフューム』のラストシーンを彷佛とさせる全裸乱交パーティで思わず苦笑い。
ラングとシャーロットがベランダで致してる時は、その勢いのまま彼女を26階の高さから落とすんじゃ・・・と気が気ではなかった。

あとびっくりするほどモラルがない!
中盤から無法地帯すぎて「あれ、この人のパートナーは誰だっけ・・・」と考えてしまうほど(笑)
ライフラインの停止をきっかけに生じるヒエラルキーの崩壊と、人間の社会性が欠如していく様子は興味深いし、怖いくらいにとても良く描写されていたけれど、人にお勧めするにはちょっと躊躇う作品でした。
私はわりと好き。マーケット店員のフェイちゃんに無愛想にレジ打ちされたい。

住人達は皆狂人、毎日が楽しい理想郷暮らしです!


ヒエラルキーの崩壊とともにモラルも崩れ去り、本能に生きる動物しかいないカオス状態が広がるハイライズ。
素肌に毛皮を纏って騎乗していたジェーンはゴダイヴァ夫人でも演じていたんでしょうか。
ジェーンとロイヤル夫人の交わす視線だとか雰囲気が蜜やかで、とてつもないエロティックを振りまいてましたね!

そして終盤で服を身に纏った女性達はハイライズの最上階で集団生活を築き、ロイヤル氏を射殺したワイルダーを囲んで何度も刺し殺す光景が宗教染みていて怖かったです。
ロイヤル氏の白を基調とした服装も相まって、より一層彼が創造主のように見えて仕方がない。
トビーが覗いていた万華鏡の演出は美しかったけれど、やはり底知れぬ恐怖が湧き上がります。

理想郷という名の蠱毒壷


ハイライズを〝るつぼ〟だとロイヤル氏は語っているけれど、様々なものが混ざっている状態なんてのはとうの昔に過ぎていて、互いに喰らいあう蠱毒壷のように見えて仕方がなかった。
そして廃墟同然に荒れ果てたハイライズから出て行こうとする人間が、ただの1人もいないことが最も恐ろしかったです。
誰も彼もがそこでの暮らしに不満を抱いているのに、ハイライズの外側を見向きもしない。
ゴミが散乱し荒廃しているマンション内の光景を誰も異常として捉えず、なおもハイライズでの暮らしに固執する様は狂気を通り越して最早滑稽でした。

住民達にとってハイライズは社会であり国であり、世界そのものである〝理想郷〟なんでしょう。
それゆえに彼らには理想郷を出て行こうという思考は一切なく、己の幸福のために成し上がろうと必死にもがいている。
かつての上流階級と労働者階級での争いが、ハイライズの中で上層階と低層階での住民達によって再現されているのです。

鑑賞中はラングがワイルダーを〝唯一まとも〟と称していることに納得ができなかったけれど、思い返してみればワイルダーだけがハイライズ内での異常性を外の世界へ知らしめようと画策していたんですよね。
とはいえ彼の〝ドキュメンタリーを撮る〟という行動は、ハイライズの上層階で暮らすためという動機が根底にあるからでしょう。

おそらく、あの住民のなかでまともなのはトビーだと思います。
ラストでは天気予報のラジオを聴いていましたし、外の世界へ興味を持っているように見えました。
彼だけはハイライズの外へ出て行くことを選ぶかもしれないなぁ。

服を着なくてもかっこいいラングは〝最高の備品〟


上層階と低層階の住民達の争いをうまくいなし、世渡り上手なラングもまた正気ではないんでしょう。
中盤以降で荒廃するハイライズの中で、頑に自分のペースを崩さない姿勢は狂気の沙汰としか思えないです。
一心にジム(だった部屋)で身体を鍛えている時のラングの瞳が、とても怖かった。

普段の自分の生活リズムを保守することで自分自身を守ろうとしていたのかもしれませんが、あの世界での異常性のなかに順応してしまっている時点で正気ではない。
ペンキまみれのトムヒはめちゃくちゃエロくてありがとうって感じですけど、肌がピリピリしそうだから早く洗い流してほしくて仕方なかったです。

懐かしさと近未来的な映像美


ファッションや車の色彩・フォルムに70年代スタイルの懐かしさを持たせつつ、それらが色味のない無機質なコンクリートを彩ることで近未来的な印象を生み出していました。
暮らす人間によって部屋の色彩や印象も様変わりしていて、部屋は住む人間の生き写しなんだなぁと改めて思いました。とても面白いです。
ロイヤル夫妻が暮らす40階のテラスにはのどかな田園風景がそのまま存在しており、高層マンションの最上階という現実とのアンバランスな感覚も幻想的で、まさに理想郷でしたね。

ラングがキャビンアテンダント達と絡みながら廊下を闊歩するシーンがすっごくセクシー!
新しい生活をめちゃくちゃ満喫しているというのが、台詞がなくてもしっかりと伝わってきました(笑)
それと飛び降りの一連のシーンも、スローモーション効果と相まってとても印象的。
映像効果も独特で、ちょっとクドさを感じる節もあったけれど、その感覚がさらに作品の不穏な雰囲気にマッチしているように感じました。

ラングがロイヤル氏の遺体をどす黒いプールに沈めるシーンが印象的で美しいと思ったのと同時に、なぜだかオフィーリアを思い出しました。おっさんだけど。
白を身に纏うロイヤル氏が暗くて汚物にまみれた空間に沈んでいく光景は、理想郷の終焉と新たな世界の始まりの訪れにも思えました。
大量の蝋燭に囲まれる晩餐のシーンもそうでしたが、ロイヤル氏が出てくると絵画的で美しい場面が多いです。

グッズセンスが最高、ピカイチ◎


パンフレットのデザインが、本編でラングも読んでいた入居者向けの案内書と同じデザインで痺れる。

HIGH-RISEb

こういう作品本編とグッズのリンクにとても弱い〜〜〜心鷲掴みされちゃう〜〜〜!
隣のドリンクはオリジナルドリンク『ハイライム』です。税込320円。
これね、炭酸めちゃくちゃキツい。映画終了しても炭酸抜けてなかったもん、やばいよこれ、兵器飲料だよ。
味もごく普通の炭酸ドリンク。見た目は涼やかでイイケドネ!

まとめ


ラングの自分の生活を維持する様は猟奇的で、そしてセクシー。
クリムゾン・ピーク』といい、2015年はトムヒが脱ぐ年だったのかな?笑

サスペンスのように誰かの死や事件をきっかけに解決に奔走する話でもなければ、ホラーのようなどんどん恐怖感を煽ってくる話でもないので、鑑賞後のスッキリ度はかなり低め。
冒頭のシーンがある意味オチなので不完全燃焼感がややありますが、「結局なんだったんだ」と作品について思考するほど、ドツボにハマっていくような気がします。

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